京都盆地における地震動特性の数値シミュレーション

 地震によって発生する揺れは、近接した2地点の間でも大きく異なることがあります。この現象は、地盤深部の幾何学的な構造が主要な原因であることが知られています。本研究室では、地盤の三次元的な形状や増幅特性を考慮した地震動シミュレーションをおこなっています。



図-1 京都盆地における地震動シミュレーション

人的被害発生メカニズムの解明とシミュレーション手法の開発


 地震による人的被害は、構造物の損傷が原因となって引き起こされます。しかしながら、構造物の損傷が引き金となって人的被害の発生にいたるまでには、たくさんの要素が複雑に絡んでいます。
 たとえば、家屋の中にいる人は、建物自身の崩壊だけでなく、家具の転倒によっても被害を受けます。 また、地震による軌道の損傷によって列車が脱線し、車内の人々が死傷する可能性もあります。 さらには、地下街などの閉塞空間においては、地震による停電や火災が原因となって、人々がパニック状態に陥り、その結果人的な被害が発生することもあります。
 本研究室では、これらの地震による構造物の損傷が間接的な原因となって引き起こされる人的被害の発生メカニズムの解明と、効果的な対策を検討するための数値シミュレーション手法を開発しています。



図-2  落橋部へ進入した列車の挙動のシミュレーション




図-3 超高密度状態における群集挙動のシミュレーション

マイクロ起振器による構造物の損傷検出手法の開発

 地震では非常に多くの構造物が様々なレベルの被害を受けます。 また、構造物は風化や降雨の影響によって年々老朽化し、微小な損傷が累積されていきます。そのため、次の大地震での悲劇的な惨事を避けるためには、既存構造物の耐震診断をおこない、適切な耐震補強をすすめておくことが不可欠です。
 本研究室では、一般の家屋や小規模な土木構造物を主な対象として、小型起振器によって加振し、その応答に対して高度なデータ処理を施すことで、迅速な耐震診断を低コストで実現するシステムの研究開発をおこなっています。

地震時における組積造構造物の破壊挙動解析

 自然災害による世界の死者の約6割は地震により亡くなっており、地震による犠牲者の大多数が耐震性の低い組積造の倒壊によって亡くなっています。現在でも、世界の約6割もの人口が組積造に住んでおり、地震の度に多くの組積造が壊れ、多くの尊い命が失われています。以上のことから、自然災害による死者を軽減するには、地震による組積造の崩壊を防ぐことが重要であると考えられます。そこで、構造物の破壊挙動を3次元で再現できる新しい解析手法を開発し、組積造の崩壊メカニズムの解明と、構造崩壊による人的被害の発生メカニズムの解明を試みている。また、安価な材料を用いた補強案について検討を行っています。



図-4 組積造構造物の破壊挙動解析結果の一例